最終更新日 2024年4月28日
FXをやる上で、誰もが必ず耳にするのが「損切り」という言葉である。
損切りとは、自分の思惑とは逆の方向にチャートが動いたとき、これ以上損失を増やさないために設定するラインのことだ。
つまり、ロスカットラインのことである。
たとえば、ドル円が140円まで下がると思い141円でショート、しかし逆に動き142円まで上がる場合、損切りを設定していないとお金を大きく失ってしまう。
だが、FXをやっている人の中には「損切りするから負ける」「損切りしなければ負けないのではないか」と思っている人も少なからずいるだろう。
そこで今回のコラムでは、FXは損切りするから負けるのか、FXの損切りのタイミングについて解説していく。
FXは損切りするから負ける?
実際に損切りを設定してトレードしてみるとわかるが、損切りラインに引っかかった後で自分の思惑どおりの方向に動くケースが少なくない。
そうなったとき、多くの人は「損切りしなければ負けなかった」という気持ちになるだろう。
ですが、それは単なる結果論に過ぎない。
そして、損切りを設定せずに大きく逆方向に動き、大きな損失を抱えてしまうのもまた結果論である。
つまり、損切りは勝ち負けで「必要かどうか」を判断するものではなく、「必要以上のリスクを負わないため」に設定するものなのだ。
損切りしたほうが損失は小さくなる
ここからは、もう少し損切りについて踏み込んで考えてみよう。
「損切りするから負ける」と思っている人は、以下のような場面を想像してみよう。
ドル円が140円の状態で、141円まで上がったらショートしようとしている。
リスクリワードは1:2で想定し、142円に損切りを設定、139円で利確するつもり。
この場合、141円でショートしたが逆行し、反対方向に大きく動いた場合の損失は100pips。
一方、損切りを設定しない場合の損失は証拠金のロスカットまで止まらない。
どちらのほうがリスクが高いかは一目瞭然である。
損切りはリスクを限定し、損失を少なくするための手段。
損切りを設定せずに、反対方向へ動いたときに「戻ってこい!」とお祈りするのはただのギャンブルである。
FXはチャートがどちらに動くかはわからないという点ではギャンブルだが、トレードスタイルを持ったり優位性を見つけることで「再現性のあるトレード」になる。
そして、再現性のあるトレードをするには、1回1回のトレードの損失を少なくすることが必須条件なのだ。
損切りしないと必ずお金を大きく失う
損切りを設定しないのはFXをギャンブルに変える行動である。
ハッキリ言えるが、損切りをしないトレードをしていれば、いつか必ずお金を大きく失うことになるだろう。
SNSには損切りせずに我慢したおかげで大きく勝ったという人もいるが、それができるのは資金があってこそである。
FX初心者であまり資金がない人が同じ行動をすれば、すぐに証拠金が足りなくなり、強制ロスカットか借金を背負うことになる。
損切りを我慢できるのは、たくさんの余剰資金があってこそ。
損切りは自分のお金を守る行為だ。
証券口座には必ず「証拠金維持率」というものがあるが、本当の資金管理は損切りによっておこなうもの。
1回1回のトレードで損切りを設定してリスクをコントロールすることで、自分の資金を管理していく。
証拠金維持率が低くなったり、追証を警告されたりするのは資金管理がかなり雑な状態である。
本当に資金管理ができている人は、勝ち負けに関わらず1回1回のトレードでの資金をしっかり管理している。
「損切りするから負ける」と思っている人は、損切りしなかった場合の都合の良い結果だけを見ているだけで、資金管理まで考えていないと言えるだろう。
ナンピンは危険
「損切りしなければ負けない」と思っている人の多くは、「損切りせずにナンピンして助かった」という経験をしている人が多いだろう。
ナンピンとは、思惑とは逆方向に動いたとき、さらにロットを足してポジションを持つことを指す。
ドル円を140円のときに10lotでロングエントリーした場合、139円に下がったときにさらに10lotロングでエントリーする。
139円まで下がってから上方向に動いた場合、元の140円まで戻った段階で損益はプラスになる。
つまり、ナンピンすれば損益分岐点を変えられるのだ。
そのため、ナンピンで助かった経験をした人は、万が一エントリーした方向とは反対方向に動いたとしても、さらにロットを足して損益分岐点を変えることで負けないと思い込むようになる。
もちろん、ナンピンのすべてが悪いわけではないが、ナンピンした後に必ずしも思惑の方向に動くとは限らない。
ドル円を140円で10lotロングし、139円に下がってさらに10lotロング、でもそこで上がらずにもっと下がる可能性だってある。
ナンピンは損益分岐点を変えられるが、逆方向へ動いた場合の損失もさらに大きくなってしまう。
それなりにFXの経験を積み、相場にも慣れてきた人がナンピンするのは助かる可能性が高いかもしれない。
だが、少なくとも「損切りしなければ負けないんじゃないか」と思っている人がナンピンするのはリスクが高い行為である。
損切りをしないから退場する
FXで資金が足りなくなって退場するほとんどの人は、損切りを設定しない人たちだ。
損切りはFXを始めたらまず一番最初に学ぶべきことだが、多くの人は最初に学んだことを実践しない。
最低限の知識を仕入れる段階で損切りについて学ぶのが基本だが、実際にトレードする段階になると学んだことを忘れてしまう人がほとんどである。
- FXに慣れてきて勝った経験を積むと、「損切りしなくても勝てる」と自分のスキルを勘違いして損切りを設定しなくなる。
- 損切りを設定せずにエントリーとは反対方向へ動いた場合、「必ず戻ってくる」と自分に都合の良い言い訳をし、ナンピンなどでさらに損失を拡大する。
これがFXで大負けしてしまう鉄板のパターンである。
損切りさえ設定していれば、多少負けが続いても資金がなくなって退場することはない。
だが、損切りを設定していないとたった1回のトレードで退場する可能性がある。
FXをやっていく上で何よりも大事なのは「生き残ること」だ。
どんなに凄腕のトレーダーでも連敗することはあるが、彼らはしっかり損切りをしているから生き残ることができている。
きちんと基本に忠実に損切りを設定していれば、Fxで負けても退場することなくトレードスキルを上げていけるだろう。
損切りをするには負けを受け入れる
損切りをする上で何よりも大切なのは、しっかりと負けを受け入れることである。
損切りができない人というのは負けを認められない人がほとんどで、「一度反対方向へ動いてから思惑どおりに動くんだ」「少し焦ってエントリーしただけだから大丈夫」と思っていたりする。
だが、これらは自分への言い訳であり、自己正当化に過ぎない。実際には、そのエントリーポイントが間違っていただけである。
- 負けを認められないから損切りできない。
- 反対方向に動くと自己正当化をはじめ、損切りしない言い訳を考える。
さきほども言ったが、世の中には勝っているFXトレーダーがたくさんいるが、それでも普通に負けたり連敗もする。
損失を重ねて退場していく人と勝っているトレーダーとの圧倒的な違いは、どれだけ損切りを素早くできるかと言っても過言ではない。
損切りをしていれば損失を最小限に抑えることができ、その分、トレードの反省と試行錯誤も増え、少しずつ着実にトレードスキルが上達していく。
損失は利益で取り戻せばいいのだが、初心者はそこに気づかず、1回1回のトレードで絶対に勝たなければいけないという気持ちが強い。
しっかりと自分の負けを認め、FXは負けるのが当たり前だと頭に入れておくことで、損切りも素早くできるようになるだろう。
FXの損切りのタイミング
損切りは自分のお金を守る行為であり、FXで生き残るためには損切りは不可欠である。
だが、実際に損切りをするタイミングは人によって異なっており、こうなったら絶対に損切りすべきとは一概には言えない。
損切りのタイミングは手法によっても変わるため、一人ひとり自分で損切のラインを決めなければならないのだ。
しかし、損切りのタイミングを考える上で大事なポイントはいくつかある。
損切りの前提はトレードの根拠が崩れた場所
損切りのタイミングは、自分のトレードの根拠が崩れた場所である。
トレードするときは、自分のトレードスタイルやら何らかの根拠に従ってエントリーするのが基本だが、そのエントリーの根拠が崩れたときが損切りするべきタイミングとなる。
たとえば、エントリーする根拠とは以下のようなもの。
- 移動平均線
- ダウ理論
- 水平線
- トレンドライン
- チャネルライン
- フィボナッチ
- MACD…etc
ほかにも、時間帯や通貨の相関関係、ボラティリティなど挙げればキリがないが、多くの人は上記のいずれかをエントリーの根拠に使っているだろう。
何を根拠にエントリーするかは人それぞれ違うが、損切りのラインはその根拠が崩れた場所なのは変わらない。
自分のエントリーの根拠が崩れた場合は素直に負けを認め、それ以上損失を増やさないために素早く損切りするのがFXで長く勝ち続けるコツである。
ダウ理論が一番わかりやすい
損切りするべきタイミングとして一番わかりやすく、初心者にもおすすめなのはダウ理論である。
ダウ理論には法則が6つあるが、損切りとして使えるのは「トレンドは明確な転換サインが出るまで続く」という法則だ。
つまり、高値の更新か安値の更新が起きたときに損切りするやり方である。
ダウ理論での損切り⇒高値の更新か安値の更新が起きたときに損切り。
チャートで実際に見てみよう。
ダウ理論ではショートするときは安値更新がエントリーポイントとなるが、この根拠が崩れる場所というのは高値更新である。
上のチャートでは白ラインの安値更新でエントリー、でも反対方向へ動き直近の高値を更新されている。
つまり、黄色のラインに損切りを設定しておくのが基本である。
- 高値更新でロングエントリー、安値更新で損切り。
- 安値更新でショートエントリー、高値更新で損切り。
損切りのタイミングに迷ったときは、ダウ理論での損切りをしておけば間違いないだろう。
移動平均線で判断する
移動平均線を損切りのラインとして設定するのも、わかりやすくておすすめの方法である。
レートと移動平均線の位置はエントリーする上でのひとつの根拠になるため、その根拠が崩れた瞬間に損切りする。
具体的には、ロングする場合はレートが移動平均線の上に抜け、一度押し目をつけてから高値越えでエントリーするが、この場合の損切りは押し安値突破&移動平均線を下抜けしたときである。
移動平均線での損切り⇒ロングの場合は、押し安値突破&移動平均線の下抜け。ショートの場合は、戻り高値突破&移動平均線の上抜け。
こちらも実際のチャートで見てみよう。
ロングするときは移動平均線の上抜けでエントリーだが、下抜けしてもそのままポジションを持っているのはエントリー根拠とは矛盾している。
結果的だけを見れば損切り後に上に大きく伸びているので「損切りしなくてもいいのでは?」と思うが、それは結果論でそのまま大きく下落してもおかしくはない。
- 移動平均線を上抜けでロングエントリー、移動平均線を下抜けで損切り。
- 移動平均線を下抜けでショートエントリー、移動平均線を上抜けで損切り。
移動平均線の近くはエントリーや損切りの動きが活発になるため、損切りするときは素早くおこなうのがコツである。
証拠金に対する比率で決める
損切りのタイミングとして、証拠金に対する比率で決めている人も多い。
FXをやっている人は、100万円の軍資金がある人もいれば、50万円や30万円しかない人もいるように、1人ひとり証拠金の額が違う。
エントリーの根拠が崩れた場所が損切りの場合は、相場環境によって損切り幅が大きくなることがあるが、証拠金に対する比率であれば最大損失が決まっているので心配いらない。
証拠金での損切り⇒あらかじめ決めた証拠金に対する比率の金額のところで損切り。
たとえば、証拠金に対する比率を4%に設定した場合、証拠金が100万円あるときは最大損失が4万円のところに損切りのラインを設定していく、といった感じである。
証拠金に対する比率の場合は、証拠金の額によって損切り幅を調整していくため、1回1回のトレードに安定感が出る。
損切りの比率は自分で好きに決めて問題ないが、大体4%~7%ぐらいで設定するのがおすすめだ。
損切り幅が大きくなりそうな手法の場合は、ロットで最大損失をコントロールしておけば問題ない。
実際にやってみるとわかるが、1回1回のトレードの最大損失が決まっているとメンタル的にも安定するので、たとえ負けたとしても立ち直りが早い。
勝ち負けで一喜一憂してしまうタイプの人は、証拠金に対する比率で損切りラインを決めてみよう。
手動でできない人はOCOや逆指値を使おう
損切りのタイミングがわかったところで、実際に損切りすることができない人も少なくない。
そんな人はOCOや逆指値を使ってみよう。
OCOとは、エントリーした後に利確と損切のラインを設定することであり、逆指値は損切りのラインだけを設定するときに使うものである。
- OCO注文⇒利確と損切のラインを設定する
- 逆指値注文⇒損切りのラインだけを設定する
実際、「〇〇円まで反対方向に動いたら損切りしよう」と思っている人は、そこまで動いても「そろそろ上がりそうだから、もう少し我慢しよう」と損切りをしない人が多い。
これは「損失回避性」と呼ばれる人間の心理であり、FXでは損失回避性が働くことで、損小利大ではなく損大利小のトレードになってしまう。
損失回避性については、以下の記事で詳しく解説しているため、興味がある人はぜひ読んでいただきます。
損切りした後で思っていた方向へ動けばイライラし、精神的にも良くありません。
そのため、多くの人はなかなか負けを認められず、はじめに決めていた損切りのラインを簡単に変えてしまう。
だが、損切りをした後で思惑どおりに動いたとしても、それは単なる結果論に過ぎない。
損切りせずにさらに損失が積み重なるのも結果論だが、FXでは最大損失をコントロールするのが何よりも大事である。
最大損失をコントロールしておけば負けても致命傷にはならず、数回のトレードで資金がなくなることもない。
エントリーした瞬間にOCOや逆指値を設定しておけば、自分の意思の力とは関係なく値動きで決済されるため、損切りするためのエネルギーも必要ない。
今まで何度も損切りラインを変えたり、損切りできずにズルズル損失を膨らませた経験がある人は、OCOと逆指値を使うようにしよう。
他人の言うことは信用するな
損切りしようか迷っているとき、誰か同じ境遇の人をSNSなどで探す人もいるだろう。
ロングしたけど下がってしまい、損切りしようと迷っているとき、SNSで同じくロングしている人がどう考えているか情報収集し、同じように行動する。
これは絶対にやめるべきであり、損切りは他人の言うことに従ってするものではない。
- 損切りは自分のトレードルールに基づいてするものであり、損切りするべきタイミングが来た場合はすみやかに実行する。
- 同じくロングしている人が「これから上がる」と言っていても、自分のトレードルールの損切りラインが来たらすぐに損切りする。
これができないと、FXでは大きなお金を失うことになるだろう。
何度も言うが、仮に損切りした後に上がったとしてもそれは結果論に過ぎず、ほかの人にチャートの右側が見えていたわけではない。
他人の言うことを信じ、損切りせずにさらに下落した場合の損失はその他人が被ってくれるわけではなく、ただ自分のお金が減るだけである。
自分の資金は自分でしっかり守るのがFXの基本
損切りをするときは、必ず自分のトレードルールに従うようにしよう。
まとめ
今回のコラムでは、FXは損切りするから負けるのか、FXの損切りのタイミングについて解説してきた。
損切りはFXの基本中の基本とも言える行為であり、FXをやるなら誰もが一番最初に学ぶことである。
だが、実際には損切りができずに損失を大きくしている人が多く、「損切りさえしなければ負けない」と思い込んでいる人も少なくない。
でも実際は、損切りをしないから退場することになり、損切りをしないからお金を大きく失ってしまう。
損切りは自分の資金を守る行為であり、FXにおいて損失をコントロールするのが何よりも大事である。
FXで長期的に勝ち続けたいなら、トレードの1回1回で必ず損切りを設定し、リスクと損失をコントロールしよう。
損切りのタイミングはトレードの根拠が崩れた場所、移動平均線やダウ理論、証拠金に対する比率で決めるのが一般的であり、自分で損切りできない人はOCOや逆指値を使うのがおすすめである。
損切りせずに損失が膨らむと、ナンピンしたり建値に戻ってくるまで耐えたりしがちだが、長期的に勝ち続けたいなら損切りは素早くするようにしよう。
FXは生き残るのが何よりも大事であり、損切りは生き残るための手段であることを忘れずに頭に入れておこう。
以下のコラムも参考になるので読んでもらいたい。
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