最終更新日 2025年3月11日
世間ではお金と幸せはイコール、つまり比例するものと思われています。
たくさんお金を稼げば稼ぐほど、幸せを実感できる機会も多く、生活や人生に対する満足度が上がるという考えです。

「お金はあればあるだけいい」「お金がすべてじゃないけど、あって困ることはない」「お金と幸せは比例しない」など、人によって意見は異なりますが、一般的な答えとして現在主流となっているのが「年収800万円ぐらいまではお金と幸せは比例する」というもの。
年収800万円あたりまではお金が増えるほど幸福感が増す、と心理学では説明されていて、年収800万円を超えるあたりで「限界効用逓減の法則」がはたらき、それ以上お金が増えても幸せの総量はあまり増えないと言います。

こうした心理学的な知見に釣られ、意識高い系の人たちは「お金と幸せは800万円まで比例する!だからまずはお金を稼ごう!」と日々せっせと額と頭に汗をかぎながら労働に勤しんでいるわけです。
でも、本当にそうなのか?
お金と幸せは年収800万円まで比例するというのは、誰にでも当てはまる事実なのか?

なぜなら、心理学は科学ではなくただの仮説であり、厳密さなんてものはどこにもないからです。
目次
お金と幸せの答えは人によって変わる
「お金と幸せが年収800万円あたりまでは比例する」というのは、心理学的な知見であり、心理学は科学ではありません。
現代は科学主義であり、何でもかんでも「科学」という言葉をつける世の中になっています。
「科学的に正しいダイエット法」やらなんやら、とにかく「科学」という言葉をつければ注目され、「科学」という言葉があれば何でも正しいと思われているのが現代です。

物理学は科学です。手からリンゴを落とせば誰もが同じように重力によって落下するからです。
「リンゴが落下するときもあれば、しないときもあるよね~」なんてものは科学でも何でもありません。
でも心理学は、「ある人には当てはまるけど、別の人には当てはまらないよね」なんてことがたくさんあります。
つまり、「限界効用逓減の法則」や「年収800万円まではお金と幸せは比例する」というのも、「人によって当てはまる人もいるし、当てはまらない人もいるよね」ということ。
お分かりでしょうか、これは何も言っていないのと同じです。
「そういうこともあるし、そうじゃないこともある」こんな中身のないスカスカな意見を参考に、自分の人生の方向性を決めていいわけがありません。
人によって意見が変わるのであれば、考えるべきは「大多数の意見」ではなく「自分にとっての正解」です。
だから仮にお金に対して「限界効用逓減の法則」なんてものがあったとしても、自分はそれに当てはまる人間なのかどうかを考えなくちゃなりません。
お金と幸せが比例する人としない人
「お金と幸せが比例するのか」という疑問に対する答えは「人それぞれ」の一言で終わりですが、これだと何の答えにもなっていないので、もう少し深く踏み込んで考えていきます。
どういう人がお金と幸せは比例し、どういう人がお金と幸せは比例しないのか。
結論から言うと、お金と幸せが比例する人は、楽しみや好きなことにお金がかかる人。
一方、お金と幸せが比例しない人は、楽しみや好きなことにお金がかからない人。
勘違いしてほしくないのが、お金と幸せが比例するのが悪いわけではないし、間違いなわけでもありません。
幸せになるのにお金が必要ないという人が偉いわけでも、そうした生き方が万人にとって理想というわけでもありません。

だからこそ、自分がどちらのタイプの人間なのかを理解した上で、自分にとっての正解を追求していくしかないのです。
お金と幸せが比例する人
たとえば、旅行が好きで毎月どこか遠くへ行ったり、海外旅行などが趣味な人によっては、お金と幸せは比例します。
お金があるだけ好きなところへ旅行に行き、気が向いたら世界一周もできちゃうからです。

現代社会の中では、刺激を求めれば求めるほどお金がかかるのが事実です。
毎日同じことの繰り返しで刺激がないつまらない毎日を送っていると、どこかへ遊びに行ったり、衝動的に買い物をしたり、お酒を飲んだり美味しいものを食べたりしたくなるもの。
こうした外の世界に刺激を求めるタイプの人は、お金が増えればできることが増える、お金があれば好きなことができるため、お金と幸せが比例する人です。
お金と幸せが比例しない人
一方、毎日散歩をするのが楽しみで、趣味は読書やランニングというタイプの人は、お金と幸せは比例しません。
なぜなら、お金が増えてもやることは変わらないからです。
映画やアニメ、ゲームやYoutubeを見るのが好きという人も、お金があっても毎日の楽しみは変わらないので、お金と幸せは比例しません。

たとえば、写真を撮る、歌を歌う、楽器を弾く、絵を描く、文章を書くといったことに自分の内側からの刺激を感じるタイプの人。
こうした人は、刺激を得るために外の世界のものを必要としないため、自分を満たすためにお金は必要ないのです。
お金と幸せを自分軸で考える
現代は消費社会であり、何をするにもお金がかかってしまいます。
ですが、企業や社会から提供される「幸せ」に飛びつくのではなく、自分の幸せにフォーカスすれば、幸せを感じるためにそれほどお金が必要じゃないことに気づくかもしれません。
一方、「自分は幸せを感じるにはお金が必要なタイプだ」というのであれば、それはそれでお金を稼いで生きていけばいい。
人の幸福感に正しいも間違いもないのだから、お金で幸せになる手段を買うのが、お金本来の正しい使い方でもあります。
心理学や科学といった言葉を聞くと、あたかも「自分もそうかも」と思ってしまいますが、大事なのは何事も自分軸で考えることです。
自分の好きなこと、楽しいと感じること、幸せと感じることに他人や社会を介在させてはなりません。

お金があれば仕事を辞めたいと思っている人もたくさんいますが、仕事を辞めて手に入るのは一時的な幸せであり、仕事を辞めればずっと幸せになれるわけではありません。
仕事を辞めれば毎日好きに遊んで、好きに生活できて、幸せになれると思っているのであれば、あなたは幸せにお金が必要な人です。
一方、仕事をしているかどうかに関わらず、内面的な充実を求める人は、幸せにお金はそれほど必要ではありません。
自分はお金で幸せを買う人間なのか
お金と幸せの問題について考えるとき、お金がない言い訳として「お金と幸せは比例しない」と思い込む人も少なくありません。
本当はお金があればやりたいことができ、今よりも幸せになれると思っているのに、それを認めてしまうと「お金がない自分は幸せになれない」と認めてしまうことになるため、「お金と幸せは比例しない」と自己正当化する。
アドラー心理学的では「人生の嘘」「劣等コンプレックス」と呼ばれるものです。
でも、人間の本性というのはごまかしが効かないもので、お金と幸せが比例するタイプの人が、無理やりお金と幸せは比例しない生き方をしても、幸せにはなれません。
自分に嘘をつくことが最大の不幸だからです。

人はアルコールが入ったときと追い詰められたときに本性が出る生き物で、日常生活の中でどれだけ取り繕っていても、いつかは必ずメッキが剥げて本性が表に出てきます。
それならはじめから自分の本心に素直になり、努力を通じて自分の幸せを追求したほうがよっぽど建設的です。
お金と幸せが比例するかどうかは自分が決めることであり、それは「あなた」という人間がどういうことに幸せを感じるのかに大きく左右されます。
毎日さまざまな情報が飛び交う中で、自分を見失わずに、自分を幸せにするには、自分軸での思考が不可欠。
他人や社会の幸せに振り回されやすい人は、一度「自分はどういう人間なのか」を考える時間をつくってみてください。
自分はお金で幸せを買う人間なのか、それとも内面的な充実に幸せを感じる人間なのかを。