最終更新日 2025年3月10日
人生において捨てる勇気を持つことはとても大切です。
人は生きていればさまざまなものを手にします。
友達や恋人、家族といった人間関係をはじめ、仕事やお金、地位や権力、車やブランド品、さらには見栄やプライド、欲求や欲望といったものもそうです。

何か新しいことをはじめたり、生活の中に変化をもたらすためには、捨てる勇気を持たなければなりません。
コップの中に新しい水を入れるには、まずはコップに入っている古い水を捨てる必要があります。
コップが満タンの状態で新しい水を注ぎこんでも溢れてこぼれるだけで、何かを変えるためには、既存のものを手放さなければならない。
捨てる勇気がない人は、何も変えられないのが人生の真理です。
捨てる勇気で手放すもの
では、捨てる勇気で手放すものとは、いったい何なのか。
それは、古い価値観や今まで大切だったものです。
今まで慣れ親しんだものを捨てるには勇気が必要であり、何か変わりたいと思ったときには、必ずまず今手にしているものを捨てなければならない。

古い価値観を持ち続けても、思考や行動が変わらないので人生が良い方向に変わることもありません。
さらに、昔は大切だったけれど、考えや価値観が変わり、大切だったものが大切ではなくなることも人生ではあります。
そうしたときに、捨てる勇気を持って手放すことができるかどうか。それが大きな別れ道です。
捨てる勇気とは、情を捨てるということと同じ意味。
慣れ親しんだものには情が芽生えるのが普通で、捨てたほうがいいとわかっていても、情で捨てられない人も少なくありません。
ですが、人生を変えたい、今の自分を変えたいと思うのであれば、思い切って情を捨てる必要があります。
今までと同じものにしがみついているだけでは、何も変わらないのが人生です。
まず捨てる勇気で手放す
有名なたとえ話のひとつに「この壺は満杯か?」という話があります。
それは以下のようなお話です。
教授が学生の前に、ひとつの大きな壺をに置いた。
教授はその壺の中に岩をひとつずつ入れていき、壺が満タンになるまで岩を詰めていった。
そして学生たちに「この壺は満杯か?」と尋ねた。
学生は「はい」と答え、教授は「本当か?」と言いながら、バケツに入った砂利を取り出した。
教授はバケツの砂利をさきほどの壺にそそぎはじめ、再度満タンになった壺を見せながら「この壺は満杯か?」と聞いた。
学生は「たぶん違う」と答えると、教授は「そうだ」と笑ながら、今度はバケツに満タンに入った砂を取り出した。
教授はバケツの砂を壺に入った岩と砂利の間にそそぎはじめ、再度満タンになった壺を見せながら「この壺は満杯か?」と聞いた。
学生は「いや、違う」と答えると、教授は水差しを取り出し、壺の縁まで水をそそぎこみ、学生に最後の質問をした。
「僕がなにが言いたいかわかるだろうか?」
一人の学生が手を挙げ、「どんなにスケジュールが厳しくても、最大限の努力をすれば、いつでも予定を詰め込むことは可能だということです」
教授は「それは違う」と言った。
「重要なポイントはそこではないんだよ。この例が私たちに示してくれる真実は、大きな岩を先に入れないかぎり、それが入る余地は、その後二度とないということなんだ」
君たちの人生にとって「大きな岩」とは何だろう、と教授は話しはじめる。
それは、仕事であったり、志であったり、愛する人であったり、家庭であったり、自分の夢であったり。
ここでいう「大きな岩」とは、君たちにとって一番大事なものだ。
それを最初に壺の中に入れなさい。さもないと、君たちはそれを永遠に失うことになる。
もし君たちが小さな砂利や砂、水など、自分にとって重要性の低いものから自分の壺を満たしていけば、君たちの人生は重要でない「何か」に満たされたものになるだろう。
そして大きな岩、つまり自分にとって一番大事なものに割く時間を失い、その結果それ自体を失うだろう。
これは人生の優先順位を考えるための比喩として使われる話ですが、見方を変えると別の解釈もできます。
つまり、壺の中に何かを入れるには、捨てる勇気を持ち、ほかのものを取り出す必要があるということです。
変わらない人は捨てる勇気がない人
私はこの壺のたとえ話が好きですが、現実問題、人生で何を優先にするべきかは時期によって変わります。
今日優先だと思うことは、1週間後には優先ではなくなっているかもしれない。
仕事を優先するべき時期もあれば、人間関係を大事にする時期もある。
健康や睡眠を優先する時期もあれば、多少無理してでも頑張る時期だって人生には必要。
人生のすべての時間を通して、必ず優先すべきものなんてものはありません。
時間、場所、タイミング、さらに言うと気分や感情によって優先順位なんてものは簡単に変わっていきます。

何を優先に考え、行動していくかを決めるのはとても大事です。
ですが、それ以上に大事なのは捨てる勇気を持ち、定期的に壺の中を精査し、必要なくなったものは取り除いていき、新しいものを入れる隙間を作ること。
望むにしろ望まないにしろ、人という生き物は変わっていく生き物です。
自分は昔から変わらないという人でも、色々な人と出会い、仕事や恋愛を通じながら、過去の考えや価値観といったものが少しずつ変化していきます。
変わらない、変われないというのは、今手にしているものを手放そうとせず、捨てる勇気がないことで現状維持に満足している状態です。
もちろん、人によっては昔から全然変わっていない人もいるでしょう。
ですが、人間性の深い部分は変わらずとも、人生の優先順位などは常に変化していくのが普通です。
昔から何からなにまで何ひとつ変わっていないというのは、芯が強いのではなく、捨てる勇気がなく変わることを恐れています。
捨てる勇気で変化していくのが人生
私は「現状維持は後退である」と思いながら生きているので、今の現状にしがみつき、捨てる勇気がない人を見るともったいないと感じます。
本人がそれでよければいいのですが、文句や愚痴を言いながらも、めんどくさいからと何も捨てずに「なにかいいことないかな」とつぶやいている人を見ると、「この人は何を言っているんだろう?」と思ってしまいます。
人間には所有欲があるので、捨てる勇気がなく、一度手にしたものを手放したくないと思うのはある程度仕方ありません。

「刺激的なことで毎日を埋めよう!」と言っているわけではなく、少しでも人生を有意義なものにするためには、学び、行動し、変化していく必要があります。
モノの断捨離は一時的にブームになりましたが、モノだけでなく人生のあらゆることに対する断捨離も必要です。
捨てる勇気を持ち、古い価値観を捨て、新しい価値観を手にすることで、人は少しずつ変わっていく。
捨てる勇気が人生を変えるのです。
絶対が絶対に存在しない人生で、唯一絶対なのは「すべては変化する」という事実のみです。
既存のものを手放し、捨てる勇気とともに常に価値観を新陳代謝することが、この先の時代を生きるために必要なことなのだと思います。