最終更新日 2026年8月5日
少し前に、国内の某証券会社の社長さんが「ウチはAブックなので」と発言し、Xで少し話題になっていましたヾ(・ω・`)ノ
ねむおからすれば、正直なところそこまで騒ぐ話ではありませんが、FX業界は昔から「Aブック」「Bブック」「ノミ行為」など、一般のトレーダーには分かりづらい言葉が飛び交う世界でもあります。
そのため、誤解だけが広がっている部分も少なくありません。
今回は、日本の低スプレッドを提供している大手証券会社が、どのようにレートを生成し、注文を処理しているのかについて少し専門的に書いてみようと思います。
内容としては業界の裏側に近い話になります。
興味がある人だけ、気軽に読んでみてください(・∀・)
日本のFX会社はなぜ低スプレッドを維持できるのか
まず知っておきたいのが、日本のFX会社が提供している超低スプレッドは、実はそのままインターバンク市場の価格ではありません。
ここを勘違いしている人は意外と多いです。
「証券会社が0.2pipsだから、カバー先も0.2pipsなんだろう」と思っている人もいるかもしれませんが、実際はそう単純な話ではありません。
2000年代後半、日本では各社が顧客獲得のためにスプレッド競争を繰り広げました。
- 他社より少しでも狭く。
- もっと狭く。
そんな価格競争が続いた結果、実際にカバー先が提示しているスプレッドよりも、顧客へ提示するスプレッドのほうが狭いという状況が生まれるようになったのです。
では、その差額はどうやって埋めているのか。
その答えが、自社内で注文を処理する仕組みにあります。
顧客同士の注文をぶつける「マリー(ネッティング)」とは
日本の大手証券会社では、多くの場合、すべての注文をそのままカバー先へ流しているわけではありません。
顧客同士の注文を自社内で相殺し、その中だけで取引を完結させています。
この仕組みを「マリー」または「ネッティング」と呼びます。
つまり、買いたい人と売りたい人を会社の中でマッチングさせるわけです。
その結果、証券会社はカバー先へ注文を流す必要がなくなり、顧客が支払ったスプレッドがそのまま会社の利益になります。
ここだけを見ると、とても合理的な仕組みに見えますが、実際にはもう少し複雑です。
注文はすぐにマッチングされるわけではない
マリーと言っても、注文が入った瞬間に必ず相手が見つかるわけではありません。
買い注文だけが集中する時間帯もあり、反対に、売りばかり増える場面もあります。
そのため、証券会社は一定時間、注文を宙に浮かせるような状態にしています。
つまり、「あとから反対注文が来るかもしれない」と待機させる時間が存在するのです。
この部分は一般のトレーダーには見えません。
チャートだけを眺めていても分からない、完全にシステム内部の話になります。
具体例で見るマリーの仕組み
例えば、ある価格で1000万通貨の買い注文が入り、同じ価格帯で2000万通貨の売り注文が入ったとします。
この場合、1000万通貨同士はその場でマリーされます。
ドル円のスプレッドが0.2pipsだった場合、その2000万通貨分のスプレッド収入が会社の利益になり、金額にすると約4万円です。
では、残った売り1000万通貨はどうなるのか。
ここから先が、AブックやBブックという話につながってきます。
残った注文はどう処理されるのか
マリーできなかった注文は、そのままカバー先へ流されるとは限らず、証券会社は一定時間、その注文を保有します。
その間に顧客が損失を出す可能性が高いと判断した場合には、カバー先へ出さず、自社内で完結させるのです。
例えば、その1000万通貨の注文を保有した結果、平均30pips分、顧客が負けたとします。
すると証券会社には約300万円の利益が発生しますが、もちろん、これはすべての注文でそうなるという意味ではありません。
しかし、仕組みとしてはこうした考え方で運用されているのです。
一方で、顧客が利益を出しそうだと判断された場合には、平均レートでカバー先へ注文を流す。
もしカバー先のスプレッドが0.5pipsだった場合、顧客には0.2pipsしか提示していませんから、その差である0.3pipsは会社負担になります。
1000万通貨なら約3万円のコストです。
つまり、利益が出そうな注文は外へ流し、そうでないと判断した注文は内部で処理する。
そんな運用が行われるわけです。
スキャルピングが嫌われる本当の理由
では、なぜスキャルピングをするトレーダーが凍結されたり、口座を制限されたりするケースがあるのか。
ここで最初に説明した「注文を浮遊させる時間」が関係してきます。
証券会社は注文を一定時間保有していますが、その短い時間のうちに利益を積み重ねるスキャルピングは、会社側にとって都合が悪い存在。
顧客が短時間で利益を確定すると、証券会社はカバーの判断をする前に利益だけ取られてしまう可能性があるからです。
結果として、その取引は会社側の損失になりやすくなります。
だからこそ、昔から高速スキャルピングを繰り返すトレーダーは、凍結や利用制限の対象になるケースが少なくありませんでした。
もちろん、すべての会社、すべてのトレーダーが同じ扱いを受けるわけではありません。
しかし、この仕組みを理解すると、「なぜスキャルピングだけ厳しく見られることがあるのか」が少し見えてくるはず。
もしあなたが短期売買を中心にしていて、「なぜ約定の扱いが違うんだろう」と疑問を感じたことがあるなら、この背景を知っておくと見え方が変わるかもしれません。
2013年頃から約定環境が大きく変わった理由
こうした仕組みは以前から存在していましたが、2013年頃を境に、国内FX会社の約定環境は大きく変化しました。
その背景には、金融庁への苦情や、インターネット上での悪評が増えていったことも少なからず影響していたと考えられます。
露骨にスキャルピングを制限したり、利益を出すトレーダーだけを凍結したりすれば、当然ながら利用者から不満が出る。
そのため、表面的には分かりにくい形でシステムを変更する会社が増えていきました。
以前のような分かりやすい口座凍結ではなく、約定の仕様そのものを調整する方向へ移っていったのです。
ブレイク時にスプレッドが広がる仕組み
代表的なのが、相場が急変した場面でスプレッドが広がる現象です。
- ブレイクアウトした瞬間。
- 重要な経済指標が発表された直後。
- ボラティリティが一気に高まった局面。
こうしたタイミングでは、それまで固定に近かったスプレッドが急激に広がることがあります。
もちろん、市場全体の流動性が低下すればスプレッドが広がること自体は自然な現象ですが、不自然に広げるケースも少なくありません。
さらに、スプレッドだけではなく、スリッページが発生したり、その両方が同時に起きたりするケースも珍しくなくなっています。
チャート上では狙った価格でクリックしたはずなのに、実際に約定履歴を見ると数pips離れた位置で成立している。
そんな経験をした人もいるのではないでしょうか。
利益が出始めると約定拒否が増えるケースもある
さらにひどいケースでは、ある程度利益を積み重ねるようになると、約定拒否が増える会社もありました。
- 一定以上のロットになると注文が通りにくくなる。
- あるいは、約定まで異常に時間がかかる。
そういった現象が実際に起きていた時期があります。
例えば100万通貨以上で約定拒否が増える会社もありました。
さらに厳しいところでは、6万通貨程度でも約定率が大きく低下するケースも見られます。
日によって設定を変えているのではないかと思うほど、約定しやすい日と、そうでない日の差が大きい会社も存在しました。
雇用統計や中央銀行の発表、重要人物の発言が予定されている日は、約定率そのものを落とす会社もあるのです。
もちろん、これらは当時の相場環境や実際の体験をもとにした話であり、すべての会社に当てはまるという意味ではありません。
ねむお自身が経験した約定トラブル
ねむお自身も、実際に約定環境の変化を経験しています。
それまでなら、注文ボタンを押してから約0.1秒ほどで約定していましたが、ある時期を境に画面がぐるぐると回り始め、注文がなかなか成立しなくなりました。
数秒待たされたあと、ようやく約定したと思ったら、その間に価格が大きく動き、一番不利な位置で約定している。
そんなことが何度も続き、画面を見つめながら、「またか」とため息をついた記憶があります(´・ω・`)
そして、人間は熱くなると冷静な判断ができなくなります。
取り返そうとしてさらにエントリーを重ね、気づけば悪循環です。
その結果、わずか3日ほどで約200万円を失い、その会社からは全額出金しました。
今振り返れば、熱くなった自分にも原因はあります。
それでも、約定環境が以前とは別物になっていたことは強く印象に残っています。
短期バイナリー規制前の「凍結祭り」
その後、日本では短期バイナリーオプションに対する規制が進みました。
現在のように1分取引などが禁止される前です。
規制が始まる直前には、短期売買を行うトレーダーへの締め出しが一気に強まりました。
SNSや掲示板でも、「口座が凍結された」「取引制限を受けた」という報告が相次ぎ、「凍結祭り」と呼ばれるような状況に発展。
当時を知っている人なら、覚えている人もいるでしょう。
ノミ行為をしなければ利益が出にくい構造
凍結祭り以降、多くの大手証券会社では約定スピードが以前より遅くなりました。
約定力も低下し、クリックした価格とは違うレートで成立するケースも増えてきます。
さらに、相場が荒れるとスプレッドが大きく広がる場面も珍しくありませんでした。
では、なぜそのような状況になるのか。
理由の一つは、実際のカバー先が提示しているスプレッドとの違いです。
カバー先のスプレッドは思ったほど狭くない
カバー先のレートを見る限り、ドル円であっても日中は0.2〜0.8pips程度で推移することが多くあります。
夕方16時を過ぎて欧州市場が本格的に始まる頃になると、多少狭くなる場面もありますが、常に極端に狭いわけではありません。
また、十分な取引量を継続して流し、カバー先と交渉して初めて条件が改善されるという側面もあります。
つまり、小さなスプレッドを維持するためには、それだけの取引量と交渉力が必要なのです。
この現実を考えると、すべての注文を固定0.2〜0.5pips程度でカバー先へ流し続けながら利益を出せる会社は、それほど多くないと考えられます。
証券会社が公表している月間取引数量などを見ても、その条件で十分な利益を確保できる会社は、おそらくごく一部でしょう。
広告費や固定費も大きな負担になる
国内の大手証券会社は、有名タレントを起用したテレビCMやWeb広告を数多く展開しています。
都心の一等地にオフィスを構え、複数フロアを借り、多くの従業員を抱えている会社も珍しくありません。
当然ながら、それだけでも莫大な固定費が発生します。
もしノミ行為を一切行わず、すべての注文をそのままカバー先へ流した場合、そのコストを吸収しながら利益を出すのは簡単ではありません。
だからこそ、多くの会社は現在のビジネスモデルを採用しているのです。
ぶっちゃけ、この構造を理解すると、日本の低スプレッド競争そのものが、かなり無理のある前提で成り立っていることも見えてきます。
まとめ|Aブック・Bブック論争よりも仕組みを理解することが大切
今回紹介した内容は、特定の証券会社を批判することが目的ではありません。
日本のFX業界全体が、長年続いた低スプレッド競争の中で現在のような仕組みになっていったという話です。
Aブックなのか、Bブックなのか。
そこだけに注目しても、本質はなかなか見えてきません。
重要なのは、証券会社がどのような仕組みで注文を処理し、どのようなビジネスモデルで利益を上げているのかを理解することです。
その背景を知っていれば、約定拒否やスリッページ、スプレッド拡大といった現象が起きたときも、感情的になるのではなく冷静に状況を判断しやすくなるでしょう。
相場で勝ち続けるためには、チャートだけでなく、自分が戦っている土俵そのものを知ることも大切なのです(・∀・)



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